かつての日本の雅楽は、四季それぞれに奏されるべき調子が決められていました。
これは古代中国の陰陽五行説の思想に基づく約束事です。
それに添えば、春は「相調(そうじょう)」、夏は「黄鐘調(こうしきちょう)」、秋は「平調(ひょうじょう)」、冬が掲出の「盤渉調」です。
『源氏物語』にも「帚木(ははきぎ)」の巻に、「十月のころほひ、月おもしかりし夜、(中略)筝の琴を盤渉調にしらべて」と出てきますから、上流社会では当たり前のことだったのでしょう。
ちなみに、雅楽の十二律の音名は、壱越(いちこつ)、断金(たんぎん)、平調(へいじょう)、勝絶(しょうせつ)、下無(しもむ)、双調(そうじょう)、鳧鐘(ふしょう)、黄鐘(おうしき)、鸞鏡(らんけい)、盤渉(ばんしき)、神仙(しんせん)、上無(かみむ)の順に続きます。