夏の野(なつのの)・夏の原(なつのはら)・卯月野(うづきの)・五月野(さつきの)・青野(あおの)
草草が生い茂り、青臭い草いきれの中を走り回った経験は誰にもありますから、夏野と言われると、眠っていた懐かしさが呼び覚まされます。
古くは、陰暦の五月五日前後に、山野で薬草を採ったり、鹿の袋角(春に落ちた角の後に再生する角、鹿茸とも)を取ったりした薬狩りの行事もあり、これも夏野で行われました。
夏野は既に『万葉集』の時代に使われていましたが、五月野(または、さつきむぬ)の方は古歌に使用例はなく、近代になって、アララギ派の歌人が好んで使った言葉です。